家を売ると、売却代金がそのまま手元に残るわけではありません。仲介手数料などの売却費用がかかり、住宅ローンが残っていれば一括で返済します。 さらに、買ったときより高く売れて利益が出た場合は譲渡所得税がかかることがあります。 この記事では、売却時の費用と税金のしくみを、国税庁のタックスアンサーの内容をもとに整理します(2026年4月1日現在の法令に基づく情報です)。
売却時にかかる主な費用
- 仲介手数料:売却価格が400万円を超える場合の上限は「(売却価格×3%+6万円)+消費税」。5,500万円で売ると上限は1,881,000円です。
- 売買契約書の印紙税:2027年3月31日までに作成する契約書は軽減税率で、1,000万円超5,000万円以下は1万円、5,000万円超1億円以下は3万円です。
- 抵当権を抹消する登記の費用:ローンを完済して担保を外すための登録免許税と、司法書士への報酬です。
- ローンの一括返済手数料:金融機関や手続き方法によって金額が異なります。
- 引越し・ハウスクリーニング・不用品の処分など:売り方や時期によって必要になります。
当サイトのシミュレーターでは、これらをまとめて売却価格の4%として計算しています。5,500万円なら220万円です。 仲介手数料の上限額だけで売却価格の約3.4%になるため、実際の見積もりで確認してください。
売却益に税金がかかるしくみ
家を売って得た利益は「譲渡所得」と呼ばれ、給与などとは分けて税金を計算します(分離課税)。譲渡所得は次の式で計算します。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
- 取得費:買ったときの代金や購入時の仲介手数料など。建物の部分は、住んでいた期間の価値の減少分(減価償却費に相当する額)を差し引きます。取得費がわからない場合などは、売却価格の5%を取得費にできます。
- 譲渡費用:売るために直接かかった費用で、仲介手数料や売主が負担した印紙税などです。固定資産税や修繕費は含まれません。
建物の価値が年々減る分だけ取得費が小さくなるため、「買った値段と同じ価格で売れた」場合でも、計算上は譲渡所得が出ることがあります。
税率は「5年」を境に大きく変わる
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計(復興特別所得税を含む) |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 売った年の1月1日時点で5年超 | 15% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 売った年の1月1日時点で5年以下 | 30% | 9% | 39.63% |
所有期間は「売った年の1月1日」時点で数えるので注意が必要です。たとえば2021年10月に買った家は、2026年中に売ると1月1日時点で5年以下のため短期になり、2027年1月1日を過ぎてから売ると長期になります。 復興特別所得税(所得税額の2.1%)は2047年分まで所得税と一緒に納めます。
自宅なら使える特例
3,000万円の特別控除
自分が住んでいる家(または、住まなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売る家)を売った場合、所有期間に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。 親子や夫婦など特別な関係の人に売った場合や、前年・前々年に同じ特例を使っている場合などは対象外です。 この特例を使うには、税金が0円になる場合でも確定申告が必要です。 詳しくは国税庁「マイホームを売ったときの特例」をご覧ください。
10年超所有の軽減税率
売った年の1月1日時点で家と土地の所有期間がともに10年を超えている場合、長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の所得税率が15%から10%に下がる特例があり、3,000万円控除と重ねて使えます (国税庁 No.3305)。
売却で損が出た場合
自宅を売って損失が出た場合、買い換えをしたときや、ローン残高より安く売ったときに、一定の要件のもとで損失をほかの所得から差し引ける特例があります(2027年12月31日までの売却が対象)。国税庁 No.3370とNo.3390で要件を確認してください。
計算例:5,500万円で売った場合
説明用に、取得費(建物の減価償却後)を4,600万円、譲渡費用を売却価格の4%(220万円)とします。譲渡所得は680万円です。
| ケース | 課税される譲渡所得 | 税額の目安 |
|---|---|---|
| 自宅・3,000万円控除あり | 0円 | 0円 |
| 特例を使わない・長期(5年超) | 680万円 | 1,381,420円 |
| 特例を使わない・短期(5年以下) | 680万円 | 2,694,840円 |
自宅で3,000万円控除が使える場合、この例では税金はかかりません。一方、控除を使えない場合は、所有期間が5年以下か超かで税額が倍近く変わります。 当サイトのシミュレーターの「売却時の手取り」は税金を差し引く前の金額です。たとえば価格が毎年1%上がる設定で10年住んだ場合、売却価格は5,500万円、手取りは1,534.9万円と表示されますが、税金がかかる場合はここからさらに差し引かれます。
売る前に準備しておきたいこと
- 購入時の売買契約書・仲介手数料の領収書を保管しておく(取得費の証明になる)
- リフォームの契約書や領収書も保管しておく(取得費に含められる場合がある)
- 売る時期が所有期間5年・10年の境目に近い場合は、1月1日基準で何年になるかを確認する
- 住み替えの場合、新しい家の住宅ローン控除と売却の特例を同時に使えない組み合わせがあるため、事前に税務署や税理士に確認する
ローンが残る場合の注意点は売るときにローンが残る「オーバーローン」とは、 何年で売ると賃貸より得かは何年住めば賃貸より得になる?で解説しています。
自分の条件で確かめるには
かんたん試算のステップ2で売る年数と価格の変化を入れると、売却価格・残債・売却費用を差し引いた手取りが計算されます。 税金は個別の条件で大きく変わるため、売却を決めたら税務署や税理士に確認してください。