家を売るとき、売却代金で住宅ローンを全額返せれば問題はありません。しかし、売却代金から売却にかかる費用を引いた額が、ローンの残高(残債)より少ないことがあります。 この状態をオーバーローンと呼びます。足りない分を現金などで用意できなければ、ローンを完済できず、原則として家を売ることができません。 この記事では、オーバーローンが起きるしくみと、どのくらいの期間注意が必要なのかを、当サイトのシミュレーターと同じ計算式で試算します。
なぜ売っても借金が残るのか
オーバーローンは、次の3つが重なると起きやすくなります。
- 買ってすぐは元金がほとんど減らない:元利均等返済では、最初のうち支払いの多くが利息に回るため、残債の減り方がゆっくりです。
- 売るときにも費用がかかる:仲介手数料などで売却価格の数%が差し引かれます(この試算では4%)。
- 売却価格が買ったときより下がる:築年数が増えるほど、一般に建物の価値は下がります。
たとえば5,000万円をフルローンで買い、価格が毎年1%下がる場合、1年後に売ると売却価格は4,950万円、売却費用は198万円、残債は4,880.1万円です。 差し引きの手取りは−128.1万円となり、この分を自分で用意する必要があります。
何年目まで注意が必要か
物件価格5,000万円・35年・金利1%固定・元利均等で、住んだ年数ごとの「売却時の手取り」(売却価格−売却費用−残債)を計算しました。マイナスがオーバーローンです。
| 条件 | 1年 | 2年 | 3年 | 5年 | 7年 | 10年 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 頭金0円・横ばい | −80.1万円 | 41万円 | 163.4万円 | 411.8万円 | 665.2万円 | 1,054.9万円 |
| 頭金0円・毎年-1% | −128.1万円 | −55万円 | 19.4万円 | 171.8万円 | 329.2万円 | 574.9万円 |
| 頭金0円・毎年-2% | −176.1万円 | −151万円 | −124.6万円 | −68.2万円 | 41.2万円 | 190.9万円 |
| 頭金500万円・毎年-2% | 311.9万円 | 324.9万円 | 339万円 | 370.6万円 | 454.7万円 | 565.4万円 |
| 頭金 | 横ばい | 毎年-1% | 毎年-2% |
|---|---|---|---|
| 0円 | 2年目から | 3年目から | 6年目から |
| 500万円 | 1年目から | 1年目から | 1年目から |
フルローンでも価格が横ばいなら1〜2年で抜け出せますが、毎年2%下がると数年にわたってオーバーローンが続きます。 頭金を物件価格の1割(500万円)入れておくと、この条件ではどのケースでも最初から手取りがプラスになりました。
ポイント:オーバーローンかどうかは「今の売却相場」と「今のローン残高」で決まります。年に1回、ローンの残高証明書と近所の売り出し価格を見比べておくと、いざというときに慌てずに済みます。
オーバーローンのときに売る方法
不足分を貯金で払う
最もシンプルな方法です。売却代金と手元資金を合わせてローンを完済し、抵当権を外して売ります。
住み替えローンを使う
新しい家を買う場合、前の家の残ったローンを新しいローンに上乗せして借りられる商品があります。 ただし借入額が新しい家の価格より大きくなるため、審査は厳しくなり、次に売るときに再びオーバーローンになりやすくなります。
売らずに貸す
転勤などで住めなくなった場合、売らずに賃貸に出して家賃でローンを返す選択肢もあります。 ただし住宅ローンは本人が住むことを前提にしているため、貸す前に必ず金融機関に相談してください。黙って貸すと契約違反になるおそれがあります。
任意売却
返済が続けられなくなった場合に、金融機関の同意を得て、ローンが残る状態のまま売る方法です。 信用情報に影響が出るなどのデメリットがあるため、検討する場合は早めに金融機関や専門家に相談してください。
オーバーローンを防ぐために
- 数年以内に売る可能性があるなら、頭金を入れる、または借入期間を短くして元金を早く減らす
- 諸費用までローンで借りると借入額が物件価格を超えるので、売る可能性がある場合は慎重に
- 元本均等返済や繰上げ返済で、残債の減り方を早める
- 駅からの距離や周辺の取引状況など、価格が下がりにくい条件を確認する
頭金の有無による違いは頭金ゼロで家を買っても大丈夫?、 返済方法による残債の違いは元利均等と元本均等の違いで詳しく比べています。
自分の条件で確かめるには
かんたん試算のステップ2で「何年後に売るか」と「価格の変化」を変えると、売却時の手取りがすぐに計算されます。 マイナスになる年数がないか、価格が下がるケースでも確認しておきましょう。売却価格の目安には国土交通省の不動産情報ライブラリの取引事例も参考になります。